駒子の備忘録

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澄輝日記6~宙全ツ『バレンシアイズ』初日雑感

 そろそろカテゴリーを新設せねば…と思っていますが未だ手を束ねています、すみません。が、病はいよいよ膏肓に入っております。
 その1はこちら、その2はこちら、その3はこちら、その4はこちら、その5はこちら。観劇感想の合間にもこちらこちらなどプチ日記が紛れていることも多いので、検索していただけるといいかもしれません。お手数おかけいたしましてすみませんです…

 さて、ルドルフで泣かなかった私が、『バレンシアの熱い花』第10場で号泣していました宙組全国ツアー公演梅田初日。人生、何が起こるかわからないものです。
 オペラグラスの目に当たるゴムの輪っかが涙で濡れて、冷たい冷たい。視界はブレて観づらいし、それでも泣きやめなかったし、なんなら嗚咽が漏れそうでした。
 私はどうして毎公演、贔屓の力量を下に見てむやみやたらと心配しては嬉しい裏切りに仰天し感動する、ということを繰り返すのでしょう。そろそろ信じてあげようよ自分、その方が楽だよ? でもこれも性格なんですよね…それにわずか一年前の同じく全ツ梅田初日『メラジゴ』のベルチェでは、できてなさ加減とニンじゃなさ加減が本当にショックで密かに落ち込んだりしたこともあったのですよ。それがまさかまさか、いつの間にかこんな立派な、素晴らしい、文句のない、素敵な輝く姿を見せてくれるなんて…号泣。
 私はキャラクターとしてそもそもロドリーゴが大好きなのですが、理想的な、本当にロドリーゴらしいロドリーゴがそこにいましたし、本当に本当に見たかった、理想的な二枚目の、水も滴る美青年貴族役のあっきーがそこにいました。甘い歌声を響かせて、相手役を優しく見つめ、冷たい眼差しを敵に飛ばし、熱く激しい芝居を見せていました。こういう贔屓の姿が見たかったのだ、ということに自分でもやっと気づいて、それに驚いて泣いていたようなものでした。本当におバカですみません。いつもスカしたことばかり言っていますが、実は私はけっこう自分で自分のことがよくわかっていないのでした。
 今回のあっきーロドリーゴは物語の中でも押しも押されぬ立派な三番手キャラクターであり、出番や台詞が前回公演より減らされたりすることもなく、相手役とふたりだけで一場面を任されたりきちんとしたソロがあったりで(しかも主題歌!)、もうこの人がこんな大きなお役を演じることは今後ないのではないかとまで思ってしまい、そういう意味でも泣けました。でもそれでも悔いはないと思えたくらい、素晴らしい好演でした。だから私は本当に泣けて泣けて、仕方がなかったのでした。
 今日はその話をします。

 プロローグ、板付きなんて聞いてない!と叫びそうでしたよね。
 幕が開いて装置を見て、ああなんかちょっと最近『激情』でも見たようなセットっぽいなあ、でもまあ同じスペインものだしなあ、とか思い、センターに板付くまぁ様の超絶シルエットを惚れ惚れ見つめ、お人形みたいだけれど本人なんだよねうん知ってる、歌い出したりライト当たったりしたら拍手かしら、その次のフレーズに入るくらいにおそらく下手から登場かしらね…とか思っていたら、下手に!すでに!いる!
 階段の影から頭しか出ていなくても、シルエットだけでもすぐわかり、心臓が脈打ちましたよ。なんならまぁ様への拍手に出遅れたくらいですよすみません。てか『アーサー王』同様に拍手が入れづらい演出でしたよね、中村A先生ちょっと考えて? 土曜昼の回からは拍手は「フッ」の掛け声のあとに入れることにしたようですね、ファンの対応力たるやすごいものです(その後の組総見に参加していなくて拍手表を確認していないので、違っていたらすみません)。
 それはともかく、そんなワケでここはロドリーゴではなく「バレンシアの男S」であり帽子の影で顔もほとんど見えないのですが、それでも口の端片方上げてときどきニヤリとするのやめていただいていいですか罪輝さん死人が出ますよ!?(嘘ですもっとやってください)
 まぁ様が赤でゆりかちゃんがオレンジ、かな? 対してあっきーは緑で、あまり似合うイメージがない色なんだけどまあそれはいいです。主役を囲んで綺麗に三人組として扱ってもらっていて嬉しいし、三人とも背が高くて脚が長くてダンスが端正で見惚れます。
 途中アダージョとして入るまぁゆうりの美しい映え方も素晴らしい!
 複雑なことを歌っているわけでは全然ない、けれど単純で豊かで美しい歌詞の主題歌がまた素晴らしい。見事なプロローグだと思います。

 続く出番は第5場、ルカノールの居城で催された夜会の場。
 ところでその前に「ロドリーゴが城に帰ってきているぞ」という台詞があるので、彼にとってもここが生家なのでしょうか。つまり元々はこのお城はロドリーゴの父親の城で、彼が亡くなった後、兄ないし弟のルカノールが城主として入り、かつ今はバレンシアの領主として君臨している…ということなのでしょうか。それとも前領主だったフェルナンドの父親の城で、領主が代々入るお城なのかなあ? でもラストでロドリーゴがラモンに「また城に遊びに来てくれ」と言っているし、ロドリーゴがルカノールの養子になったことでこの城も継いだことになっているのかしら…次の領主はロドリーゴかフェルナンドが務めることになりそうですが、ぶっちゃけロドリーゴはそれどころではないかもしれませんし、どうなるんでしょうね…? ラモン、遊びに行ってあげてね…(ToT)
 それはさておき、水色の燕尾にピンクのサッシュのあっきーロドリーゴの貴公子っぷりったらもうハンパないです! 美しい顔を苦悶にゆがめ、すがりつくシルヴィアを冷たくあしらいながらの登場、心臓止まりかけますね。自分の留守の間に人の妻となった彼女を責め、彼女をおいてのんきに遊学に出ていた自分のことも責める。彼らは友人仲間には知られた恋人同士だったようだけれど、正式な婚約をしないままに時をおいていたのは確かにまずかったかもしれませんね。そこをルカノールにつけ込まれた。今のバレンシアでは誰も彼に逆らえない…
 シルヴィアの弟マルコスや友人のレアンドロの取りなしにも耳を貸さず(『エリザ』エルマーに続きかなこにたしなめられている…!と腹筋が鍛えられましたよね)、しかしロドリーゴは具体的な善後策を考えられないままでいます。つまり彼はやっぱり貴族のぼんぼんでちょっと甘ちゃんなんだと思うの、フェルナンドが誘ってくれなかったら日々スネてグレてウジウジ悩んで後悔しているだけで日を送っていたと思うのですよ、ありがとうフェルナンド!(笑)
 夜会に現れたフェルナンドと行き合い、ルカノール公爵夫人となったシルヴィアを嫌みったらしく紹介し、フェルナンドにマドリードでの遊興を冷やかされて嫌そうな顔をするのがまたたまらん。ふたりは士官学校の同級生か何かなのでしょうかね? 貴族の子弟として親同士の行き来も幼い頃からあって知り合いだったのかもしれませんが、のちに「レオン将軍下の同門」みたいな話が出てきますもんね。国王の部下として軍務に付くことは貴族の義務で、でもホントはお飾りで役職だけもらっておけばいいようなところを、父を失ったフェルナンドだけがわざわざ離島の駐屯地まで仕官しに行っていたのでしょう。
 フェルナンドも本当は真面目なタイプの青年で、だからロドリーゴとも気が合って友達だったんだろうし、なのに数年ぶりに会ったら世慣れたと言うよりナンパになってて、ロドリーゴも友の変化にとまどったのかもしれません。彼はおそらく首都マドリードでもきちんと勉学に励み礼節をわきまえ質実剛健に暮らし、必要な社交はしても下町でハメをはずして飲み歩いたり馬鹿騒ぎするようなことはしなかったしできないタイプなのでしょう。ましてや女遊びなど。
 ルカノールは甥のロドリーゴとシルヴィアが恋人同士だったことは知っていたのでしょうか? 知っていて彼女を欲し、甥を遊学目的でよそに追い払い、彼女の父を陥れて、救う代わりに後妻になれと迫ったのでしょうか。でも彼女にも子供ができなくて、それでロドリーゴを養子にし跡継ぎとすることにしたのでしょうか。ルカノールはロドリーゴを目障りに思いつつも優秀であることを認めてはいて、今回の一件で完全に自分に屈服させ子飼いにできると判断したのかもしれませんね。でもロドリーゴはそんなことは受け入れられない、しかし夜会の席で嫌だと反抗することもできないし、フェルナンドが受けろと言うから不承不承に頭を下げる…このお育ちの良さとふがいなさの同居がまたたまらん!
 ダンスが始まるとルカノールに言う台詞は「美しい奥方を拝借しても?」だったかなと思っていましたが、「拝借します」でしたね。いいぞいいぞ! 踊っているうちに燃え上がるふたりの心、周りが見えなくなってふたりだけの世界になって…ららたんの胸に顔を埋めるあっきー、ららたんの手を取ってひざまずくあっきー、ららたんを抱きしめてすっしぃが去った方向を睨みつけるあっきー…た・ま・り・ま・せ・ん!!! 白目が効く中、暗転。

 第6場、下町の酒場「エル・パティオ」。ラモンとイサベラのショーの後、さも嫌そうに入店してくるのがたまりません。店員に赤い帽子を預け、マントを脱ぐと目にも鮮やかな赤い燕尾に白のパンツ。歓待する女主人にも最低限しか話をせず、ただ酒を飲む…みなさん指摘していますけど、ここの椅子の座り方がもう絶品オブ絶品ですよね!? 足首そこに置くんだ!?ってエラそうさ加減、慇懃無礼さ、たまりません! 安いプラスチック製の小道具のグラスが安い音しか立てられないのも気にならないくらいです!(なるけど!! バカラ持ってきてバカラ!!!)
 本来なら庶民の憩いの場にこんなにも不機嫌そうに入ってくる彼の方が完全に悪いし、いけ好かない客なんだけれど、女たちはいいカモかもしれないと思ってまとわりつく。でも相手にされない。で、歌姫(ですから! 大健闘していましたからゆうりちゃん!)イサベラの登場です。でもロドリーゴはその美貌に目をやりもしない、ただただ迷惑そうなの。女性の方から声をかけるなんてはしたない、という美意識の持ち主でもあるのでしょうね。てか今まで何度もこうしてかまわれては迷惑に感じてきたのかもしれません。ヤダ萌える!
 ところで脱線しますがゆうりちゃんイサベラはウメちゃんより断然美しくて断然いい子っぽいところがたまりませんでした。ラモン始めみんなが彼女を愛するのは、彼女の美貌ゆえではなく、こんなに美人なのにいい子、あるいはこんなに美人でかついい子、だからなのかなと思わせられました。下町育ちの下卑たところや薄汚れたところのない、明るくまっすぐで温かな人柄を思わせて、そらフェルナンドも惚れるよな、とごくごく自然に思いました。歌うまぁ様をうっとり見つめる様子が本当に愛らしいんだよねえ!
 そしてまたまぁ様も、真面目だけどチャラいチャラいけど真面目なニンがよくハマる、素晴らしい主人公像だったと思います。自分勝手な男に見えかねないところを、誠意や明るさ、温かさで支えていると思いました。あと真ん中力が本当に素晴らしくて、まぁあきゆりか(単に学年順と呼びやすさです、すみません)の映りの良さと三者三様っぷりも本当に素晴らしいと思いました。奇跡のような組み合わせで、まるで当て書きのようでした。だからこそその三人にそれぞれハマるゆうりちゃんが尊い…!
 さてしかしロドリーゴはそんなイサベラのことも振り払います、だからラモンがキレます。でもロドリーゴも全然動じない、意外に喧嘩慣れしているんです。「やってみろ」だってキャー!ですよ!! 平手打ちされても顔色ひとつ変えないクールさときたら! で、脱いだ手袋をゆっくり取り上げて、決闘の申し込みに叩きつけるのではなくその手をラモンの顔に張って、綺麗にお返しする。わあ憎々しい! 作法どおりの決闘を提案されて「貴族の旦那でしたかい」ってラモン、見たらわかるでしょどこからとう見ても立派なお貴族さま以外の何者でもないわよ!?!?
 あっきーはゆりかに比べたら線が細いんだけれど、そこもいかにも貴族のぼんぼんっぽくて素晴らしい。剣を構えて掲げる左手の長い指の美しいこと! 両者一歩も引かない立ち回りも美しい。フェルナンドがマントを投げて割って入る演出も素晴らしい絵面です!
 フェルナンドのフォローがあって、イサベラが友人のガールフレンドとわかればきちんと礼を尽くす、そんなところもロドリーゴっぽいです。明るく軽口を返すラモンもすっごいいいヤツ! ゆりかも本当にニンで素晴らしかったと思います。
 で、なのにフェルナンドがなかなか本題に入らず、ギターなんか手に取った日にはロドリーゴはあきれてそっぽを向きます。フェルナンドが甘く巧みに歌い出すのにちょっと意外そうな顔をして見せるのは、彼のこんな一面をロドリーゴは知らなかったということでしょうし、レオン将軍からバラードだのソネットだのを彼は教わらなかったということなのかもしれません。で、そのまま、聞くともなしに耳に入る歌詞に誘われるように、彼もまたありし日の恋人とのあれこれを思い出すような遠い目になる…絵になるなあ。
 一曲で一応切り上げるフェルナンドに対して、ロドリーゴが「詩人の先生」という冷やかし方をするのも素晴らしい。というかこういう台詞、柴田先生にしか書けないと本当に思います。
 続く場面でホルヘとミゲルが、ロドリーゴが剣の使い手であることをちょっと意外そうに語り合っているのがまたいいですよね。貴族のぼんぼんの嗜み、なんてレベル以上の腕であることが意外だったのでしょうし、驚異に感じたのでしょう。そうよ彼を見損なわないでちょうだい!と鼻高々になりますね(立ち位置不明)。

 第7場、密談。ここでもまたまたスカした座り方をしているので、あれは庶民たちへの威嚇ではなくロドリーゴの素なんだな、って思えるのがまたたまりませんよね。でもフェルナンドが真意を語り出すと驚いて組んだ足を下ろし、揃える。それがまた美しいのよ!
 そして立ち聞きするラモンの気配を察して「シッ」と指を立ててフェルナンドの話を制する。カ、カッコいい…(吐血)
 しかしこの三人ってなんでこんなベタベタくっついて腕組んで歌うんですかねホント意味不明ですよね可愛すぎますよね素晴らしすぎますよね? ここの舞台写真出さないとか絶対ないですよね歌劇団さま??

 第9場、辻斬りって表現がイカすし、あっきーがさおを斬りつけるってのもいいよネ!
 そして私の大好きな大好きな幻想場面へ…宝塚歌劇らしくて大好きなのです、廃れてほしくない。
 主人公とヒロインに対し、それぞれに想いを寄せる男女、という絶妙な構図に、さらに交錯するもう一組のカップルとしてロドリーゴとシルヴィアが加わります。メインキャラクター6人がハマる、絶妙オブ絶妙な構成だと思います。しかもここが幻想場面だから、ロドリーゴが今まで劇中でまったく見せなかった満面の笑みを浮かべて、ゆっくりゆっくりシルヴィアを迎えに行くんですよ、もうホント涙腺決壊しますよね心臓止まりますよね。
 フェルナンドたちの企みが成功すれば、このふたりは晴れて結ばれるのだろう、けれどフェルナンドとイサベラにはそんな未来はないのだ…ということが暗示される場面でもあります。素晴らしい。だからロドリーゴとシルヴィアがフェルナンドとイサベラの間に突っ切って入って、ふたりを分かつ形になる。素晴らしすぎます。前回公演ではロドリーゴたちに照明が当たったまま次の場面につながる感じだったと思いましたが、今回は一度サスだけになって場面を区切るのが素敵だなと思いました。で、再びライトが当たって現実の時空間に戻ると、ロドリーゴの眉間にもまた皺が戻っちゃうんだけど、ここからのららたんの嫋々たる嘆きの芝居が本当に素晴らしくて、かつ相手の男前度を格段に高めていて、彼女の娘役力に感服しました。本当にありがたいし至福です。そしてあっきーもちゃんとららたんを美しく見せられていると思いました。相乗効果でより美しい、とはカップルの正しいあり方ですよね。相手役がいる、ってなんて素晴らしいことなのでしょう!
 ららたんはこのキャラクターに似合いだろうと私は思っていましたが、本当にハマっていて素晴らしかったです。声がいいんだよね、アニメ声っぽくも大人っぽくしっとり聞かせることもできる声なの。そして本当に色っぽい、大人っぽい、せつない演技ができる娘役さんです。当時のこととて、シルヴィアの実年齢はロドリーゴよりだいぶ若いということもありえると思うのだけれど、ルカノールによって大人にさせられてしまった彼女はもはやロドリーゴより年嵩に見えるくらいな、臈長け大人びた風情を漂わせて美しくたたずむのでした。そんな、「見知らぬ女」になってしまった彼女に焦って、ロドリーゴは怒っている部分もあるのではないかしらん…ヤダ萌える!
 そしてあっきーのソロ。主題歌の前にオリジナルのフレーズがまずあって、それがもうせつなくて胸に迫って、そこからの主題歌の甘さときたら貴方…!(思わずセレスティーナ)ルドルフ効果だと思うのですが本当に歌がさらに達者になっていて、細やかでハートがこもっていて上手くて響いてシビれて、もうもうダダ泣きでした。柱の使い方がまたもう、ね…! 母親を求めてすがりついていただけのルドルフとは大違いでした。
 このメロウさ、ロマンチックさ、美男美女っぷり、甘く優しく愛し合っているのにすでにほのかに漂う悲劇の気配は、柴田ロマンにはなくてはならないものですよね。まぁ様もゆりかも、たとえばハリーのラブコメが洒脱に演じられたようにもっと演技の幅が広いタイプのスターさんなのでしようが、もしかしてあっきーの真骨頂はここにこそあったのか…!?と改めて考えさせられました。『エリザベート』のルドルフのときも、『うたかたの恋』のルドルフに通じるものがある、と言う人が多かったけれど、それってこういうことだったのかしら…? 実は私個人としてはそこまでぴんときていなかったので、本当に嬉しい発見でした。ちなみにあきららにゆひすみの空気を見る人も多かったようですが、それも私はよくわからなかったかな…? でも、嬉しいです。
 そしてそしてほぼ初であろうラブシーン、キスシーンも、ららたんが背中に回した手が雄弁で、もうもうたまらんかったとです! ごっつぁんです!!

 で、この場面でロドリーゴが身につけていた十字架を(ここの銀の燕尾も素晴らしい。見えすぎない、下品にならない絶妙な開襟具合も素晴らしい!)、第17場でシルヴィアが身につけていませんか? つまりここでふたりは初めて結ばれていて、そのあとロドリーゴが、いつかルカノールを倒し一緒になる日までこれを私と思って、とかなんとか言って渡したものなのでは?という妄想がはかどって仕方がないのですが??
 男役さんが相手役の娘役さんに小道具としての婚約指輪や結婚指輪を贈る、というベタなエピソードが私は大好きで、いつかあっきーにもやってもらいたいしその報告を聞きたいでもなんかあんまテレなくてつまんなさそう…まで受信できている私ですが、今回は公式な恋人や夫婦の設定ではないからそれがなく、残念に思っていました。でもこの十字架がそれにあたるものだったのでは!?!? キャー!!!

 第12場、ラモンが黒い天使に参加する前に、ロドリーゴがフェルナンドに「謝らなくちゃならないことがある」とシルヴィアに計画を打ち明けてしまったことを謝罪しますが、ここは、「謝らなくてはいけないことがある」でもいいかな?と思いました。あとはのちにルカノールと対決するときのフェルナンドの「剣を貸してあげろ」が、こうラモンに言うのではなく、「剣を貸して差し上げろ」とルカノールに向けて言う方が嫌みったらしくていいかなと思ったのと、「立ち会っていただこう」も決闘の立会人、傍観者となることを求めているみたいに聞こえかねないから何か言い換えられないかな?(「試合っていただこう」ってのも耳で聞くと意味が取りづらいだろうしなー、とか)という点だけが、今回日本語として引っかかりました。あとは本当にストレスがなく、敬語も正確で、むしろ美しく豊かで感じ入る台詞が多い芝居で、柴田先生の脚本力に改めて感服するしかありませんでした。
 そしてここで、妹をバルカに殺されたラモンが参加したいというのを、さっと握手の手を差し出して迎えるロドリーゴが本当に凛々しくて爽やかで、素敵です。

 第16場の出撃場面で(「静かに出発」って台詞がまたツボ)、城内でシルヴィアが手引きをする手はずの説明があったときに、ロドリーゴがちょっと誇らしげなのがまた可愛いですよね。
 あとはまあ、チャンバラが多少ダイナミックさに欠けるのと、「勝ったぞー!」ってなるのにももうちょっとカタルシスが欲しいところなんだけれど(かなこがおいしいところを持っていくのがまたかなこっぽくていいんだ!)まあ何せ古い芝居だし、映画みたいなスペクタクルは望めないので、仕方ない。
 第18場、マントと仮面を取って白ブラウスに黒のレースのベストと黒パンツ黒ブーツのすっきりしたスタイルが、もう暴力的に美しい。ラモンを優しく送り出すところもいいし、姿が見あたらないシルヴィアのことをフェルナンドに聞いちゃうなんとも言えない脳天気さもいい。現れたイサベラに「やあ」って明るく声をかけて、ふたりを残して立ち去ってあげるところも本当に素敵です。
 で、ラストの出番(?)はオフ台詞での「フェルナンド! シルヴィアが…私のシルヴィアが、死んだ…!」なんだけれど、これが本当にいいんですよね。以前は、「塔から身を投げて…」みたいな、つまりシルヴィアの死が自殺であることが明示される言葉が必要なのではないかと思っていたのだけれど(その方が、フェルナンドにとってのイサベラの「死」との意味の違いもまた明示されると思うし)、その前のららたんの悲壮な演技が十分に悲劇を予感させていますし、このあまりにもまっすぐでものがたそうなロドリーゴの前では一度でも他人の妻であった自分をシルヴィア自身が許せなくなってしまい苦しくなってしまうというのもわかる、という気がしたんですよね。だから「えっ!?」ってなる観客ももちろんいたとは思いますが、キャラクターの心情や話の流れは充分に追えるし理解できるし納得させられるものになっているのではないかと思いました。
 そしてその前の、ことにゆうりちゃんの演技がいいからこそ、フェルナンドとイサベラが別れを選ばざるをえないのが理解できるし、フェルナンドが「私のイサベラも…死んだ…」と言ってしまうのにも納得できると思うのです。すごいドラマだよなあ…
 そしてコーラスが被さり、バックのホリゾントの色が変わり、幕がただ静かに下りる…素晴らしい幕切れだと、私は思っています。
 フォローにはならないかもしれないけれど、イサベラにはラモンがいてくれます。そしてフェルナンドはマルガリータのところに帰らなくてはなりません。まどかがベストまどかだったと思いました。役付きとして今までちょっと背伸びをさせられることが多くて、十分健闘してきたと思うけれど、今回のマルガリータはとてもとても良かったと私は思いました。幼く見えるという人もいたけれど、実際にマルガリータというキャラクターは年齢として若くて、けれどフェルナンドの屈託も理解していて待つことをきちんと選択した、その歳にしては大人な少女なのではなかろうかと私は思っていて、それをまどかは立派に演じているように見えました。可愛くいじらしく、嫌みでなくぶりっ子でない。すごいことだと思いました。このキャラクターはこの物語においてとてもとても大事だと思います。それこそ6人がきちんと揃わないと成立しない物語なのです。まどかは立派に応じていたと思いました、感心しました。

 総じて、舞台としてはレトロどころかアナクロと言っていい作品だと思います。音楽が鳴って主人公が登場したり、ブリッジ音楽と暗転で場面展開がなされたり。でも都会で最先端の現代的でスタイリッシュな演劇やミュージカルを見るような観客にはアナクロでも、田舎のジジババにも絶対にわかるストーリー展開と勧善懲悪ドラマのキモ、というのは大事だと思うのです。ことに全国ツアーにおいては。これなら話についていけなくて寝ちゃう人続出、なんてことにはならないと思うのです。そういうことって大事だと思います、そうしてファンを地道に増やしていかなければ宝塚歌劇に未来はない。過激な実験やチャレンジはバウホールなりなんなり、もっと別の場でいくらでもできるはずでもありますしね。
 そんなワケで私は柴田スキーでありこの作品が大好きで、その再演を贔屓組で観られて大好きなキャラクターを贔屓が演じてくれてそれが本当に良くて、幸せです。私の号泣はそれ故のものでもあったのです。


 ショー『ホッタイズ』はフィナーレの三組デュエダンに愛ちゃんの代わりに入れていただいたこと以外は出番はそんなに大きく変更されていず、ずっと心穏やかに観られました。が、中詰めの「め組」とかすみっコ5とかだいぶ調子乗ってるし(笑)、全然油断できませんでした。あとプロローグでまどか、Jumping EYESでらら、中詰めでしーちゃん、デュエダンでまいあと、いろいろな娘役さんと組んでくれるのかが嬉しかったです! ゆうりちゃんとはデュエダンでも組むしプロローグも後半は隣になるし、逆の隣はせーこだし、Jumping~はなんなら女装のりりこと隣でコンタクトしているし、ホント楽しい! そして楽しそう!!
 コマの一場面がりんきらとセットでもらえたりするとベストだったかなーとは思いますけれどね。てかりんきらをもっと起用してほしい、ウィザードはりんきらに回した方がよかったと思いました。そしてここのゆりかはすぐ次にも娘役ちゃんに囲まれるメイン場面があるので、忙しいしトップスターを差し置いて「またこの人?」感がちょっとあるかな?と感じてしまったので。
 でも贅沢は言えません。愛ちゃんのダンスパートは全部りくだし、そういう評価なのでしょう。
 でもいいの、きっともっとずっといろいろできることがある、まだまだ驚かされるしときめかされるし好きにさせられるんだって、もう私は知っているのです。そして泣いたり笑ったり大騒ぎしながらついていく。宝塚ファンライフはめまぐるしくて大変だけれど、なるべくまるこど引き受ける。ちゃんと働いて、健康で、清く正しく美しく朗らかに観劇する。誓います。
 まずは明後日、松戸です!(笑)
 今回、いつにも増して支離滅裂ですみません、ナウオンも早く見たいけど仕事も忙しいのでもう寝なくては…どっとはらい。