駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

乱読記/書名や・ら・わ行

河﨑秋子『私の最後の羊が死んだ』(小学館)

どうして羊飼いという職業に就き、順調に美味しい肉を生産していたのに、やめる決断をしたのか。直木賞作家が「小説家前夜」の日々を綴る自伝的エッセイ。 私より十歳若い、JRA馬事文化賞受賞作もある作家さんだそうですが、私は直木賞受賞作も読んでいな…

ミン・ジヒョン『私の最高の彼氏とその彼女』(イースト・プレス)

30代なかばの女性ミレは、職場で魅力的な男性シウォンに出会う。彼は清潔感があってイケメンで、恋人になれる可能性を感じられないような「完璧な男性」だった。だが急接近、しかし驚きの事前通告が…「僕にはオープン・リレーションシップの関係にある彼女…

ラグナル・ヨナソン『闇という名の娘』(小学館文庫)

フルダ・ヘルマンスドッティル、六十四歳。女性警部として実直に勤務に励むも、ガラスの天井に出世を阻まれ、定年が数か月後に迫っていた。ある朝、歳下の上司から二週間後に後輩に席を明け渡すよう指示される。最後に自分に未解決事件を担当させるよう進言…

須藤祐実『夢の端々』(祥伝社フィールヤングコミックス全2巻)

伊藤貴代子、85歳。認知症で家族の顔さえわからなくなる日々の中、突然訪ねてきたのは、忘れられるはずもない、かつての恋人・園田ミツだった。貴代子とミツは、戦後の女学校時代に心中を図った恋人同士だったのだ。心中が失敗しても恋愛関係は続いたが、…

あだち充『ラフ』(小学館少年サンデーコミックス全12巻)

大和圭介は私立栄泉高校に入学し、寮生活を始めた。部活は水泳部。だが同じく水泳部の二ノ宮亜美に「人殺し」という言葉をいきなり浴びせられる。圭介と亜美の家はともに和菓子屋で、ふたりの祖父の時代からライバル同士だったのだ… このコロナ禍で、密集し…

アントンシク『リンドバーグ』(小学館ゲッサン少年サンデーコミックス全8巻)

周囲を絶壁に囲まれた高地の国・エルドゥラ。空を飛ぼうとすることが禁じられた王国で、大空を翔る冒険を夢見る少年ニットが、不思議な生き物プラモとともに羽ばたいていくSFアドベンチャー。 作者が何に萌えて何にときめき何にこだわってこの作品世界を構…

永江朗『私は本屋が好きでした』(太郎次郞社エディタス)

副題は「あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏」。仕事だからつくる、つくられたものは流通させる、配本が多いから書店は平積みする、そんなしくみに忠実な労働が「ヘイト本」を生み、本屋の一角で憎悪を煽ることを「普通」のこととした…と訴える、「…

凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)

再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した傑作小説。 あらすじはいつもカバーとか帯とかから流用しているのですが…

薬丸岳『友罪』(集英社文庫)

埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。無口で陰のある鈴木だったが、同い歳のふたりは次第に打ち解けていく。しかしあるとき益田は、鈴木が十四年前に連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑…

窪美澄『やめるときも、すこやかなるときも』(集英社)

家具職人の壱晴は毎年12月の数日間、声が出なくなる。過去のトラウマによるものだが、原因は隠して生きてきた。制作会社勤務の桜子は困窮する実家を経済的に支えていて、恋と縁遠い。欠けた心を抱えたふたりの出会いの行方は… 「大切な人の死を忘れられな…

アン・モーガン『私はヘレン』(ハヤカワ・ミステリ文庫)

七歳の夏、ヘレンはあるゲームを思いつく。服装や髪形を双子の妹エリーと交換して、お互いになりすますのだ。やってみるとお母さんも友達も気づかなかった。だが楽しかったのは最初だけ。のろまなエリーとして扱われ、入れ替わりのことを話しても相手にして…

柚木麻子『私にふさわしいホテル』(新潮文庫)

文学新人賞を受賞した加代子は憧れの「小説家」になれる…はずだったが、同時受賞者は元・人気アイドルで、すべての人気をかっさらわれる。それから二年半、依頼もないのに「山之上ホテル」に自腹でカンヅメになる加代子を、大学時代の先輩・遠藤が訪ねてくる…

桐野夏生『夜の谷を行く』(文藝春秋)

39年前、西田啓子はリンチ殺人の舞台となった連合赤軍の山岳ベースから脱走した。5年余の服役を経て、今はひとり静かに暮らしている。だが2011年、元連合赤軍幹部・永田洋子の死の知らせとともに、忘れてしまいたい過去が啓子に迫ってくる。元の仲間…

澤田瞳子『夢も定かに』(中公文庫)

聖武天皇の御代、後宮で働くべく阿波国から上京してきた若子は、同室になった姉御肌の笠女、魔性の春世とともに宮中で暮らすが、色と権謀の騒動続きで…仕事に意地をかけ、乙女心に揺れ、人知れぬ野望を育む先に何が待つのか? 平城京を陰で支えた女官たちを…

レーナ・レヘトライネン『雪の女』(創元推理文庫)

エスポー警察の巡査部長マリア・カッリオは、女性限定のセラピーセンター・ロースベリ館での講演を依頼された。だがその数週間後、館の主であるセラピストが行方不明になり、雪深い森でガウンとパジャマのまま死体で発見される。当時館に滞在していたのは訳…

和月伸宏『るろうに剣心』(集英社文庫コミック版全14巻)

明治11年、東京下町では、「神谷活心流・緋村抜刀斎」を名乗る辻斬りが世間を騒がせていた。神谷薫は神谷流を騙る犯人を捜す中、頬に十文字傷、逆刃刀を持つ男・緋村剣心と出会うが…明治剣客浪漫譚。 連載当時、少年漫画編集の最前線にいたにもかかわらず…

横関大『ルパンの娘』(講談社)

結婚を考えていた彼は、警察一家の長男だった。そして私は泥棒の娘…書き下ろしミステリー。 ヒロイン・華は伝説のスリ師である祖父を始め、泥棒や詐欺師の一家の娘で、スリの技などは教わってはいるけれど、家業を嫌ってカタギの仕事についている。優しい彼…

安藤なつみ『ワルツのお時間』(講談社コミックスなかよし全3巻)

名前負けしちゃってる牧村姫愛と、ダンス教室の息子なのにダンス嫌いの男の子、南たんご。パートナーがいなければ成り立たない世界一ロマンチックなスポーツ、「競技ダンス」を通して出会ったふたりに、ジュニアダンス界きっての華形カップルも巻き込んで、…

柚木麻子『本屋さんのダイアナ』(新潮社)

「大穴(ダイアナ)」という名前、金色に染められた髪、行方知れずの父親。自分のすべてを否定していた孤独なダイアナに、本の世界と彩子だけが光を与えてくれた。正反対のふたりは一瞬で親友になった…試練を越えて大人になるふたりの少女の15年間を紡ぐダ…

沼田まほかる『ユリゴコロ』(双葉文庫)

ある家で見つかった「ユリゴコロ」と題された四冊のノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去に何があったのか…第14回大藪春彦賞受賞作。 「恋愛ミステリー」となっていますが、むしろ家族小説…かな? もちろんミステ…

朝井まかて『恋歌』(講談社)

幕末の江戸で熱烈な恋を成就させ、天狗党の志士に嫁いで水戸へ下った中島歌子。だが内乱の激化に伴い、彼女は夫から引き離され、囚われの身になった。明治の世に歌塾「萩の舎」を主宰し一世を風靡した歌子は、何を思い、胸に秘めていたのか… 第150回直木…

ハヤカワノジコ『夜空のすみっこで』(大洋図書H&C Comics)

小学校の教師である星野には高校時代に憧れていた人がいた。同じ天文学同好会にいた、ひとつ上の須藤先輩。その先輩と再会したのは、高校卒業から11年が経った後だった。生徒の保護者として星野の前に現れた須藤は… ネームもコマもすごく細切れにすること…

ケルスティン・ギア『紅玉は終わりにして始まり』(東京創元社)

あたしが「めまい」に襲われたのは月曜日のお昼、学校のカフェテリア。それがすべての始まりだった。そもそもタイムトラベラーとして期待され、準備万端整えていたのは従姉妹のシャーロットだったのだ。ところが実際に過去に飛んじゃったのは、なんの準備も…

坂木司『和菓子のアン』(光文社文庫)

デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子(通称アンちゃん)はちょっぴり(?)太めの18歳。プロフェッショナルだけど個性的すぎる店長や同僚に囲まれる日々の中、歴史と遊び心に満ちた和菓子の奥深い魅力に目覚めていく。謎めいたお客さんたち…

宮野美嘉『幽霊伯爵の花嫁』(小学館ルルル文庫)

侯爵家の血を引く天涯孤独の美少女サアラは、幽霊伯爵と呼ばれるコルドン伯爵の17人目の妻として嫁ぐことになった。嫁ぎ先は墓地に囲まれ夜な夜な幽霊が現れるという場所で、妻に無関心な夫とよそよそしい使用人たちに囲まれ、けれどサアラはのびのびと毎…

角田光代『八日目の蝉』(中公文庫)

逃げて逃げて逃げのびたら、私はあなたの本当の母になれるだろうか…東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母娘の先の見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか…第二回中央公論文芸賞受賞作。 映画版が今年の日本アカ…

小谷野敦『遊君姫君 待賢門院と白河院』(アルファベータ)

大河ドラマ『平清盛』の時代…王家の権力闘争と、禁じられた性愛の官能美を冷徹な筆致で描く王朝絵巻。史料を基に考証を重ねた渾身の歴史小説。 というわけで今年の大河ドラマを毎週楽しく見ているので、勉強のために買いました。 私はこの著者の本はけっこう…

柳広司『ロマンス』(文藝春秋)

ロシア人の血を引く子爵・麻倉清彬は、殺人容疑をかけられた親友・多岐川嘉人に上野のカフェーに呼び出される。それがすべての事件の始まりだった。華族社会で起きた殺人事件と共産主義活動家の摘発、そして禁断の恋… 『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学…

メリッサ・マール『妖精の女王』(創元推理文庫)

フェアリーを見る力を持つ少女アッシュリンは、彼らの不気味な世界など見えないふりをし続けてきた。ある日、人間の男の姿をまとったフェアリーに誘いをかけられるまでは…ロマンティック・ファンタジー。 障害があるほどロマンスは燃え上がる、というのはも…

草川為『龍の花わずらい』

白泉社花とゆめコミックス全7巻。 龍の一族の次期当主・シャクヤには、婚約者がふたり。最初の婚約者ルシンが行方不明になったあと、代わりにクワンが許婚になったが、ルシンが記憶を喪失して戻ってきたのだ…三角関係ドラゴン・ファンタジー。 作者によれば…