駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

乱読記/書名さ行

ピーター・スワンソン『そしてミランダを殺す』(創元推理文庫)

実業家のテッドは空港のバーで見知らぬ美女リリーに出会う。彼は酔った勢いで、妻ミランダの浮気を知ったことを話し、「妻を殺したい」と言ってしまう。ミランダは殺されて当然だ、と断言するリリーは協力を申し出るが…男女四人のモノローグで、殺す者と殺さ…

佐川俊彦『「JUNE」の時代』(亜紀書房)

1970年代後半、アニメ専門誌が次々と創刊され、第一回コミックマーケットが開催されたおたく文化黎明期。同人文化、二次創作が盛り上がりを見せる中、密やかに「JUNE」という妖しい花が開花しつつあった…サン出版のアルバイトとして「JUNE」を企…

ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)

ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学…

ポール・ベンジャミン『スクイズ・プレー』(新潮文庫)

私立探偵マックスが受けた依頼は、元大リーガーのチャップマンからのものだった。キャリアの絶頂期に交通事故で片脚を失い、今は議員候補と目される彼に脅迫状が送られてきたのだ。殺意を匂わす文面から、かつての事故にまで疑いを抱いたマックスは、いつし…

エル・コシマノ『サスペンス作家が人をうまく殺すには』(創元推理文庫)

売れない作家、フィンレイの朝は爆発状態だ。大騒ぎする子供たち、請求書の山。誰でもいいから人を殺したい気分だったが、本当に殺人の依頼が舞い込むとは。レストランで執筆中の作品の打ち合わせをしていたら、隣席の女性に殺し屋と間違われてしまったのだ…

海野つなみ『スプートニク』(祥伝社フィールヤングコミックス)

より働きやすい職場を求め、上司に辞表を出した浅利千尋。すると上司の羽鳥汐路も「私も辞めるわ」と言い出し、揃って退職することに。半年後、浅利は汐路の結婚パーティーで汐路の弟・渡に出会う。酔いつぶれた姿を見せてしまい、浅利のほのかな恋は始まる…

ケイト・クイン『戦場のアリス』(ハーパーBOOKS)

1947年、戦時中に行方不明になった従姉を探すシャーリーは、ロンドンの薄汚れた住宅を訪ねる。現れたのは酔いどれの中年女。潰れた指で拳銃を振り回すその女、イヴは元スパイだった。第一次大戦中、若きイヴは無垢な容姿と度胸を買われ、ドイツ占領下の…

エリザベス・アセヴェド『詩人になりたいわたしX』(小学館)

ハーレムで暮らす少女シオマラは厳しい母親に猛反発していたが、高校のポエトリー・スラム部で詩のパフォーマンスを知り、自己表現の世界にのめり込んでいく…全米図書賞、カーネギー賞など数多くの文学賞を受賞したパワフルなYA小説。 少女が書いた詩のよ…

高殿円『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』(ハヤカワ文庫)

クール&クレバーで電脳を駆使する名探偵シャーリー・ホームズと、だめんず好きでお人好しの女医ジョー・ワトソン…コナン・ドイルの主要キャラたちを男女逆転させ、さらに舞台を現代へとアレンジ。独創性と原作への愛にあふれた新時代パスティーシュ! 私は…

『CIPHER』を読んで

マンガParkで全話無料配信していたので読んでみました。 私は成田美奈子は『みき&ユーティ』『エイリアン通り』の世代の人間で、だいぶ以前に手放してしまいましたが一時期はコミックスも愛蔵していました。出会ったときはその絵柄やネームのお洒落さ、…

千早茜『西洋菓子店プティ・フール』(文春文庫)

フランスで菓子作りを修行したパティシエールの亜樹は、菓子職人の祖父のもと、下町の西洋菓子店で働く。女友達、恋人、仕事仲間、そして店の常連客たちなど、店を訪れる人々が抱えるさまざまな事情と、それぞれの変化を描く連作短編集。 よくあるレストラン…

マーガレット・アトウッド『侍女の物語』(ハヤカワepi文庫)

ギレアデ共和国の侍女オブフレッドの役目はただひとつ、配属先の邸宅の主である司令官を子を産むこと。しかし彼女は夫と幼い娘と暮らしていた時代、仕事や財産を持っていた昔を忘れることができない。監視と処刑の恐怖に怯えながら逃亡の道を探る彼女の生活…

三つ葉優雨『share』(小学館ベツコミフラワーコミックス全3巻)

16歳の女子高生・はるは夢もやりたいこともなく、バイトしてお金を貯める日々を過ごしていた。だがある日、バイト先に客として現れたゲイの男の子・理央が気になってしまう。異性が苦手のはずなのになぜ一途に追いかけてしまうのかわからないまま、家を飛…

京山あつき『3番線のカンパネルラ』(祥伝社onBLUEコミックス)

相思相愛と信じて疑わなかった彼氏に突然フラれ、ショックで無気力ぎみな加納。ひとりで生きるのは無理、でもつかの間の恋をするなんてもっと怖い。なのに駅で助けてくれた高校生にはときめくし、職場の店長にもグラさいてしまう始末で…各駅停車のトリップ・…

ガブリエル・ゼヴィン『書店員フィクリーのものがたり』(ハヤカワepi文庫)

島に一軒だけある小さな書店を、偏屈な店主フィクリーは妻を亡くして以来ずっとひとりで営んできた。ある夜、所蔵していた稀覯本が盗まれてしまい、傷心の日々を過ごす中、今度は小さな子供が捨てられているのを発見し…2016年本屋大賞翻訳小説部門第1位…

中山可穂『ゼロ・アワー』(朝日新聞出版)

殺し屋に家族全員を殺され、ただひとり生き残った少女は復讐を誓う。その男にたどり着く手がかりはタンゴとシェイクスピア。東京とブエノスアイレスを舞台に、「ロミオ」と「ハムレット」の壮絶な戦いが幕を開ける…著者新境地のノワール長編。 『男役』と『…

ジェイン・ロジャーズ『世界を変える日に』(ハヤカワ文庫SF)

バイオテロのため、子供が生まれなくなる疫病に世界中が感染してしまった。このままではいずれ人類は絶滅する。科学の横暴を訴えて暴動に走る者、宗教にすがる者…十六歳のジェシーは慣れ親しんだ世界の崩壊を目撃する。彼女の父親ら研究者は治療薬開発に取り…

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)

「早う死にたか」毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗はある計画を思いつく。日々の筋トレ、転職活動、肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して…閉塞観の中に可笑しみが漂う、新しい家族小説…

宮部みゆき『過ぎ去りし王国の城』(角川書店)

早々に進学先も決まった中学三年の二月、ひょんなことからヨーロッパの古城のデッサンを拾った尾垣真は、やがて絵の中にアバター(分身)を描きこむことで自分もその世界に入りこめることを突き止める。友達の少ない真は、同じくハブられ女子で美術部員の珠…

ピエール・ルメートル『その女アレックス』(文春文庫)

おまえが死ぬのを見たい、男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…逆転を繰り返す物語、「このミステリーがすごい!」2015年海外編第1位。 冒頭は、誘拐された女性と、誘拐事件を担当する刑事の話…

桜木紫乃『それを愛とは呼ばず』(幻冬社)

いざわコーポレーション副社長の伊澤亮介は社長である10歳年上の妻・章子が誕生日の夜に不慮の事故に遭い、社内で孤立する。新潟を追われ、逃げるように東京に向かい、北海道のリゾートマンション営業という新たな職を得る。その夜、銀座のグランドキャバ…

上橋菜穂子『鹿の王』(KADOKAWA角川書店全2巻)

強大な帝国にのみこまれていく故郷を守るため、絶望的な戦いを繰り広げた戦士団「独角」。その頭であったヴァンは奴隷に落とされ、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、一群れの不思議な犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。その隙に逃げ出したヴァンは幼子…

林真理子『STORY OF UJI』(小学館)

凡庸だがどこか男好きのするひとりの女性、浮舟。彼女を巡って光源氏ゆかりの貴公子ふたりが究極の恋愛ゲームを繰り広げる。思い悩んだ浮舟がとった前代未聞の選択とは…小説至上最古にして最強の三角関係を描ききった林真理子版「源氏物語 宇治十帖」。 つま…

田中ロミオ『人類は衰退しました』(小学館ガガガ文庫全9巻)

わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は「妖精さん」のものだったりします。平均身長10センチで三頭身、高い知能を持ちお菓子が大好きな妖精さんたち。私はそんな妖精さんたちと人との間を取り持つ「調停官」となり、故郷クス…

最相葉月『セラピスト』(新潮社)

密室で行われ、守秘義務があるため外からはうかがい知れない。呼称や資格が乱立し、値段はバラバラ。「信頼できるセラピストに出会うまで5年かかる」とも言われる。「心」をめぐる取材はそんなカウンセリングへの不審とある論文をきっかけに始まった。心の…

日坂水柯『すきなひと』(白泉社)全2巻

鏡子に会うのは彼女が離婚してからは初めてで、かなり久しぶりだった。彼女とは大学の同級生でサークル仲間、卒業してからも割に連絡は取り合っていた。ただ彼女は就職して半年で結婚してしまったので、それからはさすがに連絡も頻繁にとはいかなくなってい…

宮部みゆき『ソロモンの偽証』(新潮社)全3巻

彼の死を悼む声は小さかった。けど、噂は強力で、気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。そしてその悪意ある風評は、目撃者を名乗る匿名の告発状を産み落とした…著者5年ぶりの現代ミステリー。 ミステリーだし法廷ものでもあるけれど、何より青…

柚木麻子『その手をにぎりたい』(小学館)

恋と仕事とお鮨に生きるバブル期OL大河小説。 私よりだいたい10歳若い著者が、私よりだいたい10歳年長のヒロインの、10年間を描く連作短編集でした。私が社会人になった年に終わる物語です。さもありなん、という感じ。 個人的には終わり方に満足で…

矢崎存美『食堂つばめ』(ハルキ文庫)

謎の女性ノエに導かれ、あるはずのない食堂車でとびきり美味しい玉子サンドを食べるという奇妙な臨死体験をした柳井秀晴。自らの食い意地で命拾いした彼だったが、またあの玉子サンドを食べたい一心で、生と死の境目にある「街」に迷い込む… ちょっといい話…

赤澤竜也『吹部!』(飛鳥新社)

お気楽弱小吹奏楽部に新しくやってきた変人顧問「ミタセン」。超個性的なメンバー揃いのダメダメ吹部を立て直し、全国大会出場!なんて言ってるけど、そんなの無理に決まってる! 心が元気になる青春ノベル。 ソフトカバー単行本ですがカラー口絵付きで挿絵…