新国立劇場、2014年10月17日ソワレ。
イギリスのワイト島にあるテラスハウス。その家の住人であるマデリン(若村麻由美)の元をフランシス(久世星佳)が訪れる。専業主婦だったフランシスは今では流行作家になり、夫・マーティンの長年の不倫相手だったキャリアウーマンのマデリンとの回想録を書きたくて訪れたのだ。当の夫は若い女とすでにシアトルで暮らしている。ひとりの男を愛したふたりの女の、夜を徹した対話とは…
作/デイヴィッド・ヘア、翻訳/鴇澤麻由子、演出/蓬莱竜太、美術/伊藤雅子。2002年ロンドン初演、全2幕。
ふたり芝居なので90分くらいの一幕ものかなと思っていましたが、休憩込みたっぷり2時間半の二幕のお芝居でした。お話は一夜のもののようだったので、どこで一幕を終えるのかなと思いましたが、なかなかおもしろい終わり方でした。
初演はマデリンがマギー・スミス、フランシスをジュディ・デンチが演じたそうですが、それからすると今回のキャストはかなり若く、50代の設定に下げたそうです。でもアラフォーに見えたな、下手したらアラサーにも見えると思う。女優さんの実年齢はちょうどいいのかもしれないけれど、やはり綺麗で若く見えるものだから、そのニュアンスの差はかなりあるのではないかなあ、と思いました。
たとえば夏木マリとか原田美枝子とか、余貴美子とかあたりの、もう一声上の世代の女優さん同士でもおもしろかったかもしれません。やはり若く見えすぎると、どう考えてもそんなにいい男じゃなかったんじゃないのと思えるマーティンにこんなにもこだわっているのが不思議に見えてしまうと思いました。さっさと次にいけばいいんじゃないの?と思ってしまう、というか。そもそもはもっと老境に入りかけた女たちの話だったのかな、と思ったので。
実年齢がどうかは知りませんが、フランシスのノンちゃんがマデリンの若村さんより老けて見えるのも気になりました。マデリンはマーティンより年上であることをことさらに言うので、フランシスはおそらくマーティンより若いのでしょう。でもそんなふうには見えづらいかな。まあフランシスは実年齢より老けて見えがちな、家庭と子育てに疲れた女…ということなのかもしれませんが、でも現在は流行作家なんだしねえ。
ふたりともすでに男とは別れているわけですが、ふたりの間に関係性があるとすればそれは元・妻と元・愛人、ということになります。若い女と年上の女、とか専業主婦とキャリアウーマン、とか暗い女と明るい女、みたいな明確な対比はありませんでした。そういう類型的なことにはしたくなかったのでしょう。
同様に、夫婦の暮らしとか不倫関係がどんな感じだったのかとかどう離婚に至ったのかとかについてもディテールは明確には語られません。だからそういうことにも眼目がない話なんですね。
じゃあどこにキモがあるのだ、なんの話なんだと言われると…だからちょっと答えようがないような、そんな不思議な舞台でした。
別にふたりの女が対立して口論する、というだけでもないし、理解し合って友情が芽生える、ということでもないし、自分たちを捨てた男をふっきって未来に向かって歩き出す…なんて話でもない。でもその全部でもあるようでもある。そんな一夜の対話の話です。
女優はふたりともだからやりたいようにやっていて、その空気の合わなさ加減が登場人物たちの境遇にはぴったりで、そのスリリングさはおもしろかったです。ふたりともとても素敵でした。でも逆の配役でもおもしろかったかもしれない、と思わせられたりするのもまたおもしろかったです。
でも結局のところじゃあなんだったんだろう、てかマーティンってなんかいけすかない感じしかしなくない?とか思うと、そもそも男性が書いた話だしな、こんなちゃんとしたいい女がふたりもそんな男を愛して、捨てられて時間が経ってもまだふっきれないでいるとかありえるのかな、こんなにいちいち会っていたときのころの様子とか覚えてたりするものかな、私だったらすぐ忘れ去ることにしそうだけどなとかいろいろ考え出したら、なんかちょっと作者に都合のいい話なんじゃないのかな、みたいに思えてきて、ううーむ、となってしまったりしてしまいました。
あとタイトルがサブタイトルともどもよくわかりませんでした…
セットは素敵で印象的でした。