2019年SBS、全16話。原題ママ。
BS12で全16話で見ましたが、向こうは1話70分くらいなので、カットはまあまああったのかもしれません。
久坂部羊の小説『神の手』が原作だそうで、日本でもドラマ化されたそうですが、私は未読・未見。
主人公はチソン、ヒロインはイ・セヨンの医療ドラマです。イ・セヨンは子役出身で『チャングム』なんかにも出ていたそうですが、私はお初…かな? 今は『赤い袖先』も萌え萌えで見ています。
患者を安楽死させたことで服役中の医者…という、なかなかなスタートのドラマでした。あとはまあわりと普通の病院ものにおちついていってしまうところもありましたが…
チソン演じるチャ・ヨハンが、安楽死/尊厳死させた患者が、カットもあるのかあいまいな描写でしたが連続少女殺人犯みたいな…で、死刑囚だったのかな? でも病気で、ものすごい苦痛があって、回復の見込みはなくて、まあたとえ快癒したとしても死刑が待っているだけなんだけれど…という設定が、なかなか重くて興味深かったです。彼に娘を殺された女性が看護師で、ヨハンを告発し、彼女と連携している検事もしてヨハンを敵視しているのですが、実は彼も癌を患っていて…みたいなターンもあったのに、そういえば後半なんだかフェイドアウトしたような…? 安楽死の法制化を進めようとする引退した大臣とか、苦痛なく死ねる薬を開発している組織とか、そこが結託して広めている新興宗教めいた患者の会とかとか…というエピソードもあったのに、そのあたりも尻すぼみだったような…? 原作小説ではそのあたりがみっちり扱われているのかもしれません。
苦痛というものに独特の感性を持っていて、病気の診断を下すのが早いヨハンは、患者を治すことはもちろん、患者の苦痛を取り除くこと、QOLを上げることに邁進します。なので病院の効率を上げようとする経営陣とは対立して…みたいなターンもあるのですが、理事長選といい、このあたりもカットもあるのかもしれませんが中途半端でしたね。やはりヨハンとシヨンのロマンスに搾った方が視聴率が取れる、とかだったのかしらん…
そもそもヨハンは痛みどころか外気温などの刺激をほぼ感じられない病気で、だから苦痛も本当の意味では理解していないんだけれど、だからこそ知りたいと熱望している…というのはおもしろい設定でしたね。暑い寒いを感じないので体温調節もできなくて、あげく突然に倒れたりする。切ってもぶつけても痛みがなく、知らない間に血が出ていたり痣ができていたりする…これは日常生活がけっこう難儀だろうな、というのは想像できます。主に短命である、というのもすごくわかる。だからこそヨハンは、自分も生きたくて、周りも生かしたくて、懸命なのでした。
シヨンにも植物状態の父親がいて…という設定があり、痛みってなんだろう、命ってなんだろう、人生ってなんだろう、幸せってなんだろう、というようなことを考えさせられるドラマでした。まあ全然説教臭くは作っていなくて、むしろドライにさくさく進んでいってしまうくらいではあるんですけれど…韓ドラなら、もっと深くエグく作ることもできたのでは、とはちょっと思ったかな。でもチソンにほだされて(笑)、楽しく見ました。
ラストも、治す薬ができたのか?あたりはふわっとさせつつ…でしたが、まあラブラブには終わったのでよしとしましょう。
生きていれば何かしらの苦痛はある、愛し合う者同士で分かち合い、慈しみ合って生きるしかない…みたいな結論が、美しかったです。