スマホアプリ「マンガワン」で配信中の小野ハルカ『四代目の花婿』、小学館裏サンデーコミックスで1巻が来週19日発売。
ヒロインはヤクザの組長の娘、相手役は若頭の青年、というある種ベタな構造のラブコメなのですが、すごいのは舞台がちょっと未来の日本、というよりは現実とはちょっと違う現代の日本で(地名が神田ではなく神多だとか、銀座でなく吟座だとか)、人工子宮を体内に注入することにより男性でも妊娠が可能になっている世界、なのです。
ヒロインの燈子自身は女組長だった母親から生まれているのですが、母親は病弱で産後の肥立ちが悪かったため、次の子供は彼女の舎弟だった父親が産み、彼は妻亡きあと今また第三子を妊娠中。燈子が母に替わって組を継ぐためには結婚と跡継ぎを設けることが条件で、彼女は子供を産んでくれる婿を取ろうと探している。でも世の中的には「産む男」はまだまだ少数派で差別対象で…という、この設定ひとつで男女観というかジェンダー観がものすごく浮き彫りにされる、ものすごい世界での物語になっているのです。
漫画家も女性、担当編集者も女性。でも作品のテイストとしては少年漫画で、絵柄も決して少女漫画ふうの華やかなものではありません。私は1ページ目を読んだときには、婿取りに狙われる他組の跡継ぎ息子が読者感情移入対象の少年キャラクターとして立てられるのかな?と思ったのですがそういうこともなく(硬派で凶暴なヒロインに迫られることは怖いんだけど、モテることは嬉しいし彼女には可愛いところもあるのでときめく、でも妊娠するのは男の沽券に関わるのでヤダとジタバタする…とか、ありがちでしょ?)、あくまで主人公は燈子で、でも若頭の雪人もかなり変わったキャラクターの持ち主で感情移入しづらく、これは男性読者にはけっこう読みづらそうです。いろいろ設定が特殊なので、キャラクターいずれかになったつまりで読むタイプの漫画というよりは、第三者視点で成り行きを見守るタイプの作品なのかもしれませんが…アプリの中では「女性向け」にジャンル分けされていますが、はたしてどんな層が読んでいるのでしょう? 私はまったく存在を知らず、ひょんなことから手に取りました。
個人的には、もっと萌え萌えで読みたい! ホントは好き合っているのに相手の真意を誤解して…という鉄板パターンですし、関係性萌えな方には特にオススメできます。もうちょっとだけ絵に色気というか柔らかさがあればなー、と思うけれど、やりすぎになると私は引くだろうから、今がギリギリの塩梅なのかもしれません。
燈子や雪人を巡っていい味のキャラクターが次々配されていてその布陣も興味深く、それぞれを巡ってドラマもいろいろ展開できそうで、ストーリーそのものも今後の展開に目が離せません。最終的にふたりがくっついて透子が子供を産んで終わり…なんて安易なことにはならなさそうとは思うけれど、どこに向かって転がる話なのかまだまだ全然読めないのもおもしろい。注目していきたいです!