東京宝塚劇場、2011年11月25日ソワレ。
大劇場初日前日に人生初緊急入院をしてしまったため、遠征計画はすべてパアで、この日がマイ初日になりました。
ツイッターなどに上がる感想もなるべくネタバレしないよう薄目で読んでいて、予備知識をなるべく持たないよう、いつもの大劇場初日を迎えるときのような心境でいられるよう、プログラムやル・サンクも読まないようにしていました。
そして今となっては、自分がどんな舞台を想像していたのかもはやわからないのですが…
そして贔屓公演に関してはいつも、やはりなかなか冷静には観られないなとは感じているのですが…
なんか、物足りなく感じたんですよね…
物語が、ね。演技が、ではなくて。
まあ破綻していないのでそれは最大の長所かもしれませんけれど。景子先生の大劇場作品はあんまり…という印象がどうしても個人的にあるので、大きな劇場に合わせてデカいことやろうとして崩壊するくらいならこじんまりしていていいんですけれど、でもやっぱりバウでよかった、バウがよかった作品に見えました。
それでいうと、この舞台のくくりというかキャッチ?は「Musical」なんですけれど(「ミュージカル」でないところがまたなんとも…)、まあ全然ミュージカルにはなっていないよね…
ショーアップされているのはプロローグくらいだし。歌はもちろんいくつか入るんだけれど、ダンスはない。ミュージカルとしての作激は本当にヘタ。
その前の観劇がお芝居は『仮面の男』だったり、次の観劇予定がお芝居は『我が愛は山の彼方に』で、要するに個人的には「宝塚グランドロマン」モードだったのも悪いほうに出たのかもしれませんが…
そして私はこの「くくり」が、「ミュージカル」とか「グラン・ステージ」とか「江戸風土記」とかいろいろあるけれど、「宝塚グランドロマン」こそを宝塚歌劇には求めているんだな、と思いました。
ああ『仮面のロマネスク』が楽しみだよ…そしてその次の本公演はまたスーツというかタキシードの世界だろうし、シブいというかしょっぱい話になりそうだし…やっぱもう一公演やって小柳先生とかに登板してもらってコスチューム・プレイのラブコメが観たいなー…
そう、ラブが薄いのも寂しかったんですよね…テーマがアルティジャーノたちにあるんだから仕方がないんだけどさ…
というか全体にアタマで作った物語に思えて、萌えとかパッションが感じられないのが興ざめしました。でもすごく景子先生っぽい。
私は景子先生とは同世代でもあるし、エッセイ本とかも読んですごくシンパシーを感じたし、逆に言えば同属嫌悪を感じるんですよね。
そして私はクリエイターにはなれなかった、ならなかった、プロデューサー的職業についている。でも景子先生はクリエイターになったんだから、もっともっとがんばってもらいたいわけ。だってこの程度の物語なら企画書で私だって書くよ。それにもっと肉付けできるかどうか、あるいは同じテーマをもっと違うドラマで表現するパワーがあるべきなんじゃないの?と思ってしまうのですよ。
物語の展開も台詞も歌詞も直截に過ぎて味わいも何もあったもんじゃない。剥き出しすぎる、ダイレクトすぎる、品格がない。もっと違うものを見せて、結果的にこういうことが香気として醸し出される、そんな舞台を求めているんだよなあ…と思ってしまったのです。
たとえば組ファン以外はリピートしたくはならないんじゃないかな、とかそういう心配もしてしまいますしね。
ハートウォーミングでウェルメイドな小品、というコンセプト自体はアリだとは思いますけれどね…ううーむ…
サルヴァトーレ・フェリというキャラクターは、私にはとても実直で、仕事熱心で、でもアメリカ人が画一的な番組を作ろうとしているのに対し宣伝のためにはアメリカ人好みの「イタリアの伊達男」になってみせて派手なショーを提案してみせるくらいの度量もある、すごく大きな人物に見えました。
でも本当はもうちょっと、功をあせって先走っている感じとか、大事なものを忘れかけている感じとかがあってもよかったのかもしれません。クラウディアの台詞で、彼のやり方は本流ではないと見る保守派の人もいるようなことが後で語られますが、彼こそが主流派に見えましたもん。
だからこそアメリカ進出を断念したことは私には立派に敗北に見えた。そしてそれは物語の主人公にたどらせるべき道筋ではないのではないかしらん、と居心地悪く感じました。
それもあって、だったら失敗もやむなしと見えるような危なげな感じを漂わせておいてもいいのかもしれない、と思ったのです。どうなんだろう?
レニーのいかにも軽薄なアメリカ人青年っぽいキラキラっぷりはさすがテルでした。
みーちゃんのおおげさでテキトーでケチなプロデューサーもよかった。カイちゃんも(りくくんは識別できなかった、すみません…)。
一方ナポリチームはみっちゃんマリオがこれまたいい役で、みっちゃんはいい人役もいいけどこういう役もホントに上手いよなーと思います。サルヴァトーレとのやり取りは飛んだ萌えポイントでした。
その弟のちーちゃんもしっかり求められる働きをしていてよかったです。
ビジネスパーソンとしてはすっしーさんやトモエさん、その秘書のひかるんがきっちり務めていましたね。アメリカ人資本家の冷徹さや調子の良さを上手く体現していたもっさんやいちくんもとてもよかった。
サルヴァトーレのコピーとしてのし上がり、アメリカ人にすり寄るまさこもきっちり役をつかんでいました。
サルヴァトーレのパトロンである大ちゃんも、ちゃんとクラウディアと夫婦に見えたしよかったです。
れーれもこういう役が実は上手いよねー。せーこはしどころがなかったかな、あとたらちゃんは仕事としては何をしている人なのかよく見えなかったのが残念。
ビアンカはあれだけ語られているんだから、もっとぱっと美人に見えるうららちゃんを配役した方が良かったのでは…
そしてもちろんおやっさんは素晴らしい。幻想の中でアレツサンドロと語るサルヴァトーレの芝居は絶品でした。
あとはミーナに対する芝居も本当にイイ。
しかしミーナは…ミーナねえ…
もちろん個人的にドジっ子萌えが少なくともヒロインに関してはないせいもあるんだけれど…景子先生はワケありの女や大人の女や悪女はまあまあ上手く作るのに、普通の女子が本当に下手で、こういうところにも世代を感じます。より下の世代はもっと自分の女子力に自信があったりてらいがなかったりするので、普通のヒロインもごくナチュラルに作りますからね。
せっかくスミカが変に背伸びしない作りこみ過ぎないキャラクター(何しろ演技力があるのでそれもこなしてしまうのだけれど)をやれそうと期待していたのに、肝心のキャラクターに魅力がないのではいかんともしがたい…
ただ、プルチネッラの扮装で生き生きと踊り出したときには本当に鳥肌が立ったんですよね。だから彼女には隠された才能がちゃんとあった、というか、自信が持てさえすれば発揮できる才能を持っている人だったんだ、ということにするのかと思っていたんだけれど、続く仕事もNG出したりしているし、舞台女優になったといっても喜劇女優でどうやら格下に見ている感じだし(本当のことを言えばそんなことはないと思うのだけれど…)、要するにごく普通の女の子の域を出ていないわけです。
これじゃヒロインにならないよね…まあこの話はそもそもラブロマンスではないのでヒロイン不在でも成立しているんですが、それは宝塚歌劇としてどうなのよって感じですよね。
ラストシーンはもちろん素敵でした。でもそういうこととは別に、もっとラブラブとかべたべたとかいちゃいちゃとかドロドロとか見たいやん、という下世話な欲求が満たされていないのですよ。
代わりに高尚ぶった職人の意地とは、伝統とは、一流とは、絆とは…みたいな言わずもがなのことを延々と語られた舞台、という印象が、どうにもぬぐえなかったんですよねえ…
なんだろうこのチューニングの合わなさぶり。
これでまた二回目以降の観劇では全然違う感触を得ることも私は経験として知っているので、あまり心配はしていないのですが、しかし一般的にはリピーターの方が稀なわけでさ、やっぱりちょっと評判とかが心配なのですよ…
口うるさくてすみません。
そうだ、あと、なんか今回の短靴ってヒール低いですかね?
大空さんのいつものカリスマレベルのスタイルの良さ、足の長さを感じなかったんですけれど…???
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「ショー・アトラクト」は、これも次からはより楽しめるようになるかなー。私はショーの見方が下手なので。
とりあえず場面や出番を抑えるのに懸命になってしまった感じだし。
ただ、主題歌のあっかるい歌謡曲ノリは意外にツボりました。大空さんに似合わなげなのにスミカのナイス・ドールと楽しげに歌うナイス・ガイがとてもよかったです。ほらイチャイチャしているトップコンビはそれだけで可愛いんだよ…
風の場面では泣きたいんだけど、そして千秋楽近くになるにつれ泣くのが目に見えているんだけれど、これまたザッツ宝塚であるブロード・マインデッドみたいなお衣装が私は笑えて苦手なので、それがつらいよな…大空さんでは見たくないんだよね…すみません…
あと、ここのあもたまの歌とかは本当に素晴らしいのでいいんだけれど、もちもちはエトワールだけだしせーこもソロないよね? いくら磐石安心の圭子お姉さまを呼んでいるとはいえ、歌える人にはもっと歌わせてほしい。もっさんとかいちくんとかも。みっちゃんにももっと朗々と聞かせるいい曲を長く。
なんか全体に歌が弱いショーだなあと思ったんですよね。キムやまっつが素晴らしい『RSF』のあとだったからかもしれませんが…
あとスミカはホント歌がんばんないと! ダンスとなると俄然輝くだけにホントに!!
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明日また見に行くので、全然違うことを言っていたらすみません…