駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『ミセン』

 めぐろパーシモンホール、2025年2月10日18時半。

 囲碁のプロ棋士を目指し対局を積み重ねてきたチャン・グレ(前田公輝)だが、プロ棋士の採用試験に失敗し、後援者の紹介で大手貿易会社ワン・インターナショナルにインターンシップとして入社する。熾烈な試験を勝ち抜いて入社した同期インターンたちは、成績トップのアン・ヨンイ(清水くるみ)、現場主義のハン・ソギュル(内海啓貴)、成績2位のチャン・ベッキ(糸川耀士郎)という秀才ばかり。学歴のないグレが配属されたのは、会社の残務処理班と呼ばれている営業3課で、鬼才オ・サンシク課長(橋本じゅん)とサポートのキム・ドンシク課長代理(あべこうじ)がグレのメンターとなるが…
 原作著者/ユン・テホ、脚本・歌詞/パク・ヘリム、音楽/チェ・ジョンヨン、翻訳・訳詞/高橋亜子、演出/オ・ルピナ、振付・ステージング/KAORIalive。韓国のウェブコミック、WEBTOONの大ヒット漫画を原作に、ドラマ化もされ、日本でリメイクドラマも放送された作品をミュージカル化。全2幕。

 韓国ミュージカルの輸入かと思っていましたが、リーディング公演が昨夏ソウルで上演されたものの、ホリプロが韓国スタッフを使って作った和製(と、この場合は言っていいのか…?)ミュージカルだったんですね。『ナビレラ』『愛の不時着』『マリー・キュリー』『デスノート』『キングアーサー』などのそうそうたるスタッフさんたちのようでした。それは素晴らしいことだけれど、邦人作家を育てるべきではないのか…?
 原作漫画は未読、韓ドラも日本のリメイクドラマも未見で、囲碁の知識は『ヒカルの碁』から学んだもののみ、という状態で、でもトウコさんも出てるしおもしろそうだし…とチケットを取りました。以前バレエか何かで一度来たことがあるハコでしたが、後方どセンター席で観ることができました。
 大阪、愛知と来て最後が東京上演というちょっと珍しいスケジュールで、好評が西から聞こえてきていて、楽しみにしていたのですが…
 …が、私は全然ダメでした。多くの人がいい、いいと言っているものが刺さらないと、しょんぼりしますよね…だがこれが私の感性だ、仕方ない。
 プロ棋士にはなれなかったけど、囲碁のセンスを武器にのし上がっていって「貿易王に俺はなる!」…みたいな話だとは別に思っていませんでした。人間は囲碁のようには動かないから、囲碁のセンスは実社会では役に立たないだろうな、と考えていたので。なのでむしろZ世代というか今どきの若者、あるいは何か挫折経験がある人間(いない人間なんているのか、というつっこみはさておき)が奮起したり奮闘したりするお話…みたいなものかな?とは考えていました。でも…この主人公、何もしなくないですか? 特に1幕。
 ラインナップまで見て、グレ役者とじゅんさんが上下から同時に出てきたので、ああ『ナビレラ』とかと同じで実質はW主演というか、むしろオ課長こそが真の主役…みたいな構造だったのかな?とも思ったのですが、別にバディものだったわけでもないし、グレは基本的にずーっとただ突っ立ってるだけじゃありませんでした?
 私は商社の仕事のことは何も知らないけれど、そして自分ではとても特殊な業界のマーケ仕事をほんの数年やったことしかないんですけど、でも商売ってこんな単純なものじゃなくない…?と思わざるをえませんでしたしね。いくらフィクションだから、とはいえ…原作漫画やドラマではもう少しディテールが描かれているのでしょうか? グッズにまでなっている靴下のエピソードも…うぅーん。
 あと、韓国ミュージカルあるあるだと思うんですけど、歌い上げ系の大ナンバーがひっきりなしに続いて、芝居のパートがほぼないんですよね。なので音楽的な素養がない私はこれだとむしろ退屈するのでした。だってその間は芝居が、ドラマが進まないから…歌も登場人物たちの心情を歌うようなエモーショナルなものじゃなくて、状況を歌うというか、転換させていく歌が多いんですけど、それも私の好みではなかったのでした。
 あとは群像劇っぽすぎるというか…そのわりにはインターン四人それぞれのエピソードも弱いし出番も実は多くないし…せっかくまあまあスターを配役しているのに…
 そして、ダンスではなくフォーメーションを見せるだけの振付、ステージングもまったく好みじゃありませんでした。そう、いいとか悪いとかではなく好みの話をしています。私が好きな、好ましいと思うタイプのスタイルの演目じゃなかった、残念、という話です。お仕事ものとして云々、と語るレベルの手前の話です。
 トウコの二役はさすがだと思いました。
 …おしまい。すんません!
 いやーくるみちゃんも内海くんも好きだし期待してたのになー…メガネくん大好きなのでベッキ糸川くんにもロックオンだったのになー…禅さんはさすがだし東山光明の爪痕の残しっぷりとかすごかったんだけどなー…なー…なー……(遠ざかる)
 すみません、残念な観劇でした。