お茶の水女子大学徽音堂、2019年11月9日16時35分(初日)。
今年の星組版を元に上演。演出/高梨遙菜。
去年の公演『メランコリック・ジゴロ』の感想はこちら、星組『エルベ』の感想はこちら。
というわけで今年も楽しみに出かけてきました。
去年の録音BGは劇団から音源を借りられたのかなと思うくらいにちゃんとしていたと思ったのですが、今年はけっこう怪しかったかな…でも必死で耳コピして楽譜に起こして、打ち込んだり演奏してもらったりしたものなんでしょうね。苦労が忍ばれます。でもエドガー(あお)のピアノ曲が違ったのは何故なんだろう…
演出も去年は完コピだった気がしましたが、今回はミザンスが違っていたり、ちょいちょい本公演というか宝塚版と違っていたところがあって新鮮でした。お祭りの間にカール(たーちゃん)が屋台か何かで髪飾りを買ったっぽくてそれをマルギット(れいな)にプレゼントしてあげていたり、なんとカールが札束でマルギットの背を打つくだりがありませんでした。これはDVチックだとしてカットしたのかなあ、でもそういうことではないんだと思うんですけれど、どうなのかなあ。
ともあれ、歌は緊張もあってかけっこう手に汗握りましたが、全体に芝居はとてもよかったと思いました。ちょっとオーバーなくらいによく演技をしていて、この作品の意図がちゃんと理解できているんだなと思わせられました。フロリアン(ゆい)の声が良かったり、ヨゼフ(ちゃんぬら)がやたら渋くて上手かったり、アンゼリカ(もえ)がちゃんとしっとり色っぽかったりと、あちこち目を惹きました。あとなんてったってマルギットが可愛い!
装置やセットはなくて、ほぼ小道具だけの芝居で(ボートは出たけど!)、照明は残念ながらとても貧弱で、なんというか作品として剥き出しになった分、脚本の力を改めて思い知らされた気がしました。要するにものすごく通俗的なメロドラマなんですよ、けれどだからこそ真実なわけです。マルギットより若いくらいの、二十歳になるやならずの役者たちより観覧に来たその父兄に刺さるのでは…とか思ったけれどそれってズバリ私の世代でした(笑)。だからもう少し上かな、私の親世代くらいかな。それなら荒くれ者のやくざな水夫とか山の手のお屋敷のお金持ちの大家とかその家出娘とか、リアル半分ファンタジー半分でビンビン来るのではないかしら。実際父兄が多いであろう客席も、途中から我が子の出番を探すより物語の行く末を息を潜めて見守っていたように感じられました。
そしてだからこそ、ラストの構成の鮮やかさに唸らされたのではないかしらん。プロローグにスターの顔見せのように歌われていた主題歌、そのシチュエーションとその歌が最後にもう一度繰り返されて、そのとき初めて最初の場面の意図を観客は知るわけですよ。なんて憎いの! 通俗的メロドラマが「物語」に、「作品」になる瞬間だと思います。
よくこの作品にトライしてくれました。来年は何をやるのかなあ、今年の目玉はなんだったかなあ。一本立て作品は無理だろうから、とはいえ『青薔薇』も『武蔵』も『異ルネ』も駄作だし『壬生』は…日本物はハードルが高いんじゃなかろうか。とすると『食聖』かしら、お衣装が大変すぎるかしら。別箱でいいなら『追憶のバルセロナ』か「はばたけ黄金の翼よ』がいいかもしれません。
酒場女だったおはなさんが可愛かったので次回のヒロインに押したいと思います(笑)。今回、ひょんなことからずっと知っていたヅカ友が同窓だったこととがわかったりもして楽しかったので、来年も誘い合って観に行きたいと思っています。