駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

坂元裕二『往復書簡 初恋と不倫』(リトルモア)

 『カルテット』の脚本家が贈るふたつの恋物語、『不帰の初恋、海老名SA』『カラシニコフ不倫海峡』。

 アオリは「ロマンティックの極北」となっていますが、そうかな? 甘くない、という意味かな?
 男女ふたりの間を行き交う手紙やメールの文面のみで綴られた書簡小説みたいなスタイルなのですが、朗読劇というか二人芝居の脚本だったのですね。あるいは小説として先にあって、上演され、その後書籍として出版されたのかな? ともあれ、たいそうおもしろく、スリリングに読みました。
 現実の会話であれ文面で交わされるものであれ、どこに転がるかわからないようなところがあるからこそおもしろい、みたいな部分をすくうのがこの作家は本当に上手い。ユーモラスな中にせつなさがにじみ、人間と人生が浮かび上がる。技ですねえ。
 楽しい読書でした。