新国立劇場、2014年2月4日マチネ。
1969年、北アイルランドの貧しい町ベルファーストではIRA(北アイルランドの独立を訴える過激派)の活動が盛んだった。この町の高校のサッカーチームの少年たちとそのガールフレンドたちは、テロに巻き込まれるなど度重なる危険や苦悩の末、ついに栄光をつかむ。だが優勝パーティーの夜、仲間のひとりが過激派に殺され…
音楽/アンドリューめロイド=ウェバー、脚本・作詞/ベン・エルトン、演出/藤田俊太郎、翻訳/黒田絵美子、訳詞/高橋知伽江。2000年ロンドン初演、現在は『The Boys In The Photograph』というタイトルの上演台本になった演目。全2幕。
楽曲と訳詞が素晴らしく、若いキャストの歌唱力が素晴らしく、客席というか会場いっぱいを使った構成で、楽しく観ました。アンサンブルまでとても個性的で良かったです。
私が観た回には音響トラブルがあって、主役の歌声がマイクに乗らない場面があったのですが、すぐさまバンドが音量を下げてなるべく生声でも聞こえるようしていたのに感心しました。
でもやっぱり普通の日本人にはカトリックとプロテスタントの対立とかアイルランドとイギリス(正確にはグレートブリテン?)との対立とかは知識として知るものでしかなくて、なかなか共感したり想像したりしづらいものだと思います。
だからサッカーのチームメイトとしては仲良しなのに、急にデル(平方元基)に喧嘩を吹っかけるトーマス(中河内雅貴)がいかにも唐突で意味不明に見えてしまうし、そこで若干置いていかれてしまうんですよね。
でも二幕になってさらに事態が深刻になると、紛争の原因が何かとかはもうどうでもよくなっていて、普通のことが普通に通らない息苦しさとかは理解できるようになる。だからぐっとせつなくしんどくなって、泣きそうになりながら物語を追うことになるのでした。
私はジョン(馬場徹)がコーチになってチームに戻ってくるといいな、と思いましたが、写真の中の彼の位置は空っぽのままでした。その後のエピローグとして彼の帰還が語られるけれど、死者は帰らないし、戦争は未だなくなっていないし、ちょっと嘘くさいなと感じました。
でもだからこそやっぱり戦争は怖くて醜くて愚かで狂っていて絶対にいらないものだ、ということが痛感できたし、若い人が多かったように見えた観客の心にもそういったことが響けばいいな、と思いました。
女優陣もみんなキュートで可愛かったな。清々しかったです。